日本の不況脱出の方法を探る一環として、量的緩和について研究してみました...

学校では教えてくれない株のことを、年平均+30%で運用しつづける管理人がイチからわかりやすく教えています。

量的緩和は貸出増・株高・円安を発生させたのか?効果の検証

日本債務危機


日本の不況脱出の方法を探る一環として、量的緩和について研究してみました。

 

量的緩和

中央銀行が各行の国債を買い取り、その代金分、当座預金残高量を増やすこと。中央銀行が民間の銀行に資金を供給するときは、中央銀行にある各行の当座預金残高の数字を増やすことでおこないます。

 

量的緩和に期待する効果

量的緩和をすると、銀行の保有する国債が現金に換わります。その国債の購入資金が預金であれば、定期的に預金金利の支払いが発生しますので、そのまま持っていては損をします。

よって、銀行は何かで運用(貸出・投資)しようとします。その結果、市場にお金が出回り、景気が活性化します。

 

これが一般的に期待される量的緩和の効果です。

では実際に、2001年以降に日本で実施された量的緩和で、これらの効果が得られたのか検証してみたいと思います。

 

かなり長い記事になりましたので、先に結論を書いておきます。以降の記事は、その結論に至るまでのプロセスとなります。

 

結論

日銀が量的緩和で銀行に供給した資金は、貸し出しや株式投資に流れなかった。

2003年以降の景気(株価)回復は、主にアジアの経済成長の恩恵を受けてのものであり、量的緩和によるものではなかった。

※欧米向け輸出製品を作るための機械の輸入増も大きな要因であり、間接的に欧米の経済成長の恩恵も受けています。

 

量的緩和と市場の変化

以下のグラフは、2000年以降の日銀が市場に供給したお金の総額[マネタリーベース]と銀行貸出(国内銀行)日経平均消費者物価指数の推移を比較したものです。

マネタリーベースと銀行貸出の推移

マネタリーベースと日経平均の推移

マネタリーベースと消費者物価指数の推移
※2008年後半における物価上昇は石油価格の上昇によるものです。

(参照)東京証券取引所、資金循環統計-日本銀行、総務省統計局

 

量的緩和と銀行貸出

2001年3月から2006年3月まで量的緩和が行われたのですが、ご覧いただけるように銀行貸出は逆に減っています(汗”)

背景を調べてみた結果、これは次の5つが原因になっていると思われます。

 

1.銀行が不動産バブルで抱えていた不良債権の処理[損失確定]を進めていたため、自己資本比率の関係で、リスク資産である貸し出しを増やせなかった(むしろ減らしています)。

不良資産残高の推移
都銀・旧長信銀・信託の金融再生法開示債権-金融庁

 

2.優良企業は、銀行貸出の回収による資金繰り難を恐れ、社債による資金調達をし始めていた。

 

3.銀行も企業も日本経済の先行きに明るい見通しを持てていなかったため、貸し出しや設備投資に消極的だった(投資コストの回収が見込めなかった)。

 

4.量的緩和を実施する前から金利がゼロだったため、量的緩和をしたからといって企業の借入コストがさらに下がるわけでもなかった。

 

5..財政悪化により国債が大量に発行されていたため、銀行はより確実に利益が出せる国債の購入に資金を充てていた(国債金利>預金金利のため、利益を得ることができます)。

20120124_1.gif

※量的緩和の実施により、2001年に国内銀行の国債が出入りで14兆円ほど減りましたが、その後2年で30兆円以上増えています(資金循環統計>フロー-日本銀行より)。

 

これらの要因により、日銀が銀行に資金を供給しても、それが貸し出しに向かうことがなかったのだと思われます。

 

量的緩和と日経平均

マネタリーベースと日経平均の推移

 

この株高は量的緩和の影響なんでしょうか? ズレがありすぎて分かりませんね(汗”)

というわけで、こちらも背景を調べてみたところ、なんと国内銀行は2006年まで株式を減らし続けていたことが判明しました。

では、いったい誰が相場を引っ張っていったのかというと、やはり海外の機関投資家でした。2003年に15兆円ほど、2005年に11兆円ほど日本株を増やしていました。

 

さてさて、海外の機関投資家はいったい何がきっかけで日本株を買ったのでしょうか? 調査の結果、輸出と日経平均に高い連動性があることが分かりました。

輸出と日経平均の推移
財務省貿易統計、東京証券取引所より

おそらく、海外の機関投資家は、「輸出の伸びによる将来利益の増加」を期待して日本株を購入したのでしょう(日本の銀行はほとんど反応していません)。

 

では、なぜ2003年から輸出が伸びたのでしょうか?

もしかして、「量的緩和により銀行の海外投資が増え、円安[ドル買い・円売り]が進んだことで、輸出が伸びたのかも」と思いましたが、

マネタリーベースと為替レート

上のグラフを見てもわかるように、マネタリーベースの増加よりも円安が先行しているので、量的緩和が円安を引き起こしたというわけではなさそうです。

念のため、国内銀行の対外投資の出入りも確認しましたが、2001年はむしろ1兆円のマイナスでした(ドル売り・円買い)。

 

ではいったい何が原因で円安が進行したのでしょうか?

こちらも背景を調べてみましたが、おそらく2001年の「ITバブル崩壊」「9.11同時多発テロ」の影響で、海外の機関投資家が出入りで9兆円ほど日本から資金を引き上げたのが、円安の直接的な原因かと思います。

 

しかし、輸出が伸びる頃には、為替レートが元の水準に戻っていますので、円安が輸出増を引き起こしたわけでもなさそうです。

輸出と為替レートの推移

 

となると、純粋にどこかで輸入需要が高まり、輸出が増えたことになりますね。

北米、EU、アジア向けの輸出推移

上のグラフから、アジアの経済成長がこの輸出増をもたらしたことが分かります。これからはアジアとの繋がりを大切にしていかないといけませんね。

 

■その他参考資料

機械受注と銀行貸出の推移

2000年以降、公共事業は減少傾向にあります。
(参考)国土強靭化でデフレ脱却! 「公共事業=悪」が誤解とわかる事実

2003年以降、民需も伸びていますが、外需に比べると経済成長に寄与する割合は小さいです。

 

日本の量的緩和が失敗した理由

1.銀行の不良債権処理が終わってなかった

2.日本経済の持続的成長戦略がなかった

3.銀行の運用能力が低かった

投稿日:2012年01月27日 19:16
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